「あの……」
「何?」
「私、お礼をしたいんですが、今これしかなくて……」
 ビショ濡れの封筒を寄越す彼女。
「こんなもの受け取れないよ!」
 結構厚みも有る。俺はそれをつっ返した。
「違うの! これは確かに私の全財産。でも……宝くじなんです。連番で買ったんで当たれば3億円です」
「……」
「……すいません。当たる訳有りませんよね」
「いや、それなら余計に貰えないよ。そんな大きな夢は……ははは」
「でも、お礼を受け取って欲しいんです」
「うう〜ん、なら真ん中の一枚を貰えるかな? 夢の共有だ」
 彼女はビショ濡れになった一枚を俺に差し出した。
「解りました。じゃ、これを……」
「有難う。当たるといいね」