「落ち着いた? 寒くない?」
「ええ、だいぶ温まりました」
 俺の入れてあげた(なけなしの)ココアを飲んで彼女は微笑んだ。
「貴男は、飲まないんですか?」
「(そりゃ俺だって飲みたいさ! 大好物だもの!)……いや、俺は川の水で満腹だし、ははは」
「わ、私の所為でごめんなさい!」
「俺の泳ぎが下手な所為だよ。早く行ってやれなくてゴメン」
「いえ、あのペットボトル。あんな物でも随分違うんですね」
「飲み水を汲むのにいつでも転がってるからね」
「機転が効きますね。私だったらとてもとても……」
 いやいやどうして、やいのやいの……。そうこうしている内に、彼女はすっかり明るさを取り戻していた。