【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

ひとしきり愚痴を言って気が済んだのか、女は立ち上がると「では参りましょう」と言って歩き始めた。


「え、何処に?」


「決まっている。殿のお部屋よ」










長い廊下を歩き部屋に着くと、殿はすごく不機嫌そうだった。


周りの人達はびくびくとして落ち着かない。


殿が頭を掻こうと手を動かしただけでびくりとするという感じだった。


そんな家臣たちの反応に、さらに殿の顔が険しくなっていく。


それでもわたしが来たことに気付くと、少し表情を和らげ「来たか」と呟いた。


「よし、行くぞ」


わたしは座る間もなかった。


皆が唖然とする中、殿はすでに庭に下りて草履をつっかけている。


「あ、あのどこへ?」


焦って訊いたけど、殿は無言でさっさと歩き始めた。


「早くお行き」


わたしを案内してきた女に促され、わたしも急いで庭に下りて殿の後を追った。


振り向くと、部屋の中の皆は何とも言えない表情でわたしたちを見送っていた。