【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

翌朝。


わたしは言われた通り、桜色の小袖に着替え待っていた。


待っていたけれど、誰も来ない。


溜め息の数ばかりが増えていく。


そうしているうちに日は高くなり、その頃になってようやく昨夜の女がやって来たのだ。


女はわたしの不満そうな顔を一瞥すると鼻で笑った。


「殿はお忙しい身じゃと言うたであろう。もっと謙虚になりなさい」


謙虚?


久々の知らない言葉にわたしは首を傾げた。


聞こうにも秀政はいないのだ。


きょとんするわたしを余所に、彼女は何やらぶつぶつ呟いている。


耳を澄ますと、「本当に、殿はどうしてこのように物を知らぬ小娘を……」

などというようなことを言っている。


(わたしは無理矢理連れてこられたんだぞ)

と思ったが、あえて口には出さなかった。


これ以上彼女と争っても仕方ない。