【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

ひとり悶々としていると、しばらくして誰かの足音が聞こえてきた。


はっとして振り向くと、女がひとりこちらに向かって来ている。


身構えて待っていると、女は表情のない顔でわたしの前に立った。


手には何か携えている。


「殿に言われ、寝巻と着物を持って来ました。お着替えなさい」


有無を言わせぬと言った感じに言うと、女はわたしに着物を押し付けた。


そしてそのまま立ち去ろうとする。


「ちょ、ちょっと待って!殿はどこにいるの?」


すると女は向こうを向いたまま、

「殿はお忙しい身じゃ。いちいちそなたに構ってはおれぬ。大人しくしていなさい」

と険しい口調で言い捨てた。


わたしのことを露骨に嫌がっているのが伝わってきて、わたしはむっとした。

「殿、殿ってみんな偉そうにするけど、あの人そんなに偉いの?わたしのこと無理矢理連れて来ておいて、詫びひとつないなんておかしいじゃない!」


たまっていた鬱憤を全部吐き出したみたいだった。


それでも女は動じないのか。


ゆっくり振り向くとわたしを睨みつけたのだ。