殿は馬にまたがり自分の前にわたしを乗せると、瞬く間に山を駆け下り、城下町を通り抜けた。
本当にあっという間だった。
わたしは言葉なく馬を駆る殿にしがみ付いていたけれど、不思議と怖いとは思わなかった。
それよりも、この人とこうして間近にいるということの方を不思議に思っていたのだ。
会う度に、わたしの中に嵐を巻き起こす人。
もう二度と会えないのだと思っていたのに、なんの縁か再び出会い、どこかへ連れていかれている。
眼の端にちらりと堀の家が映った。
(あっ)と思って振り向くと、殿がぐいっと私を元の位置に押し戻した。
「殿!秀政の家が!」
「秀政など、忘れてしまえっ!」
殿は愉快そうに笑っていた。
わたしをからかっているのか。
そう思うほどに。
本当にあっという間だった。
わたしは言葉なく馬を駆る殿にしがみ付いていたけれど、不思議と怖いとは思わなかった。
それよりも、この人とこうして間近にいるということの方を不思議に思っていたのだ。
会う度に、わたしの中に嵐を巻き起こす人。
もう二度と会えないのだと思っていたのに、なんの縁か再び出会い、どこかへ連れていかれている。
眼の端にちらりと堀の家が映った。
(あっ)と思って振り向くと、殿がぐいっと私を元の位置に押し戻した。
「殿!秀政の家が!」
「秀政など、忘れてしまえっ!」
殿は愉快そうに笑っていた。
わたしをからかっているのか。
そう思うほどに。

