「殿?!」
ねねさまが非難の声を上げた。
「ねね。秀政に伝えよ。この女、俺が貰い受けるとな」
わたしは何が起こったのかいまだ把握しきれず、殿の肩の上でじたばたもがいていたけれど、殿の腕の力はまったく緩まない。
細身ながら、がっしりとした体つきをしている殿に、わたしの力など及ぶはずもなかった。
「なりませぬ、殿!」
必死に止めようとするねねさまを尻目に、殿はさっさと踵を返し馬の方へと向かって行く。
顔を上げると、ねねさまが追って来ていた。
「ねねさま!」
助けを求めるように名を呼ぶと、
「しつこいぞ、ねね」
と静かな声で殿が言った。
今までとは比べ物にならないくらい小さな声だったけれど、わたしの視線の先でねねさまはびくりと肩を震わせて足を止めたのだ。
「あ……」
ねねさまは両手で顔を覆いながらその場にくず折れた。
その時わたしは誰もこの『殿』に逆らうことなどできないのだということを知ったのだった。
ねねさまが非難の声を上げた。
「ねね。秀政に伝えよ。この女、俺が貰い受けるとな」
わたしは何が起こったのかいまだ把握しきれず、殿の肩の上でじたばたもがいていたけれど、殿の腕の力はまったく緩まない。
細身ながら、がっしりとした体つきをしている殿に、わたしの力など及ぶはずもなかった。
「なりませぬ、殿!」
必死に止めようとするねねさまを尻目に、殿はさっさと踵を返し馬の方へと向かって行く。
顔を上げると、ねねさまが追って来ていた。
「ねねさま!」
助けを求めるように名を呼ぶと、
「しつこいぞ、ねね」
と静かな声で殿が言った。
今までとは比べ物にならないくらい小さな声だったけれど、わたしの視線の先でねねさまはびくりと肩を震わせて足を止めたのだ。
「あ……」
ねねさまは両手で顔を覆いながらその場にくず折れた。
その時わたしは誰もこの『殿』に逆らうことなどできないのだということを知ったのだった。

