【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

ねねさまはこの勢いのよい殿に対しても動じることもなく、存外豪胆な人らしい。


わたしでも不釣り合いと思える秀吉さまのことを、本気で好いておられるのだ。


わたしはそんな対照的な二人を息を殺して傍観していた。


すると突然殿がぎろっとこちらを見た。


心の臓が跳ね上がった。


そして乗馬用の鞭をわたしの顎にあてがい、無理矢理上向かせた。


痛みに顔を歪めると、

「この者は堀秀政どのの屋敷にて下働きをしているものです。今日は供として連れてまいりました」

とねねさまが焦ったように声を出した。


「ほう、秀政の」


殿はわたしをまじまじと見ている。


わたしは身動きすらできず、殿の鋭いまなざしを受け止めるだけで精一杯だった。