【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

ねねさまが竹筒からこぽこぽと湯を出している。


「ちょうど良い湯になっているわ」


ねねさまが抱えてきたのは、野点の用意だったのだ。


彼女の優美な所作は舞い落ちる花びらと相まって、まるで舞を見ているようだった。


「さ、一服どうぞ」


わたしは緊張しながら茶を頂いた。


「おいしい……」


この景色のせいなのか、それともねねさまの腕なのか、茶は今までの中で一番美味しく感じられた。


それからしばらく、わたしたちは言葉を交わすことなく花見をした。


気が付けば、いつの間にか日が傾いていた。


「まあ、大変。そろそろ帰らないと、あなたが叱られてしまうわね」


ねねさまはこんな時までわたしを気遣ってくれながら、茶器などを包み小脇に抱えた。


「さ、行きましょ」


名残は尽きないが、やはり帰らねばならないのだろう。


わたしには夕餉の支度が待っているのだから。