【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

勝手口から往来に出ると、さまざまな種類の人に行き会う。


百姓から行商人、武士、派手な格好をした浪人者など。


本当に多種多様な人たちが、この清州の城下を行き来していた。


その往来を少し行くと、堀家よりもひと回り大きな屋敷があった。


そこが木下さまの屋敷だった。


志摩に言われたように勝手口に回り、台所へ行き、おとないを入れようとすると、そこにはひとりの女性がいて忙しく立ち働いていた。


その方こそ誰あろう、木下藤吉郎秀吉さまの奥方さまである、ねねさまだった。


ねねさまは美しく聡明なだけでなく、女中がするような仕事も好んでされ、良妻として家中でも評判だった。


あの『猿どの』には勿体無い奥方だと、志摩が言っていたのを思い出し、わたしは思わず噴き出してしまった。


するとねねさまが振り向いた。