【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

今も志摩はにこやかに笑いながら、手に持っていた籠をわたしの方に差し出した。


見れば、その籠には何かが入っていた。


「すまないがねえ、これを木下さまのお屋敷まで届けてほしいんだよ。勝手の方から入って台所に声をかければそれでいいから。頼まれてくれるかい?」


それは珍しい貝で、せっかく手に入ったものだからと、方々に配って回っているという。


「ええ、いいですよ」


木下さまのお屋敷なら、目と鼻の先だった。


ねねさまという美しい奥方さまがおられるから、ここに来たばかりのわたしもすぐに覚えてしまった。


秀政は木下さまと随分親しいらしく、そのねねさまも時折手土産を携えては堀家を訪れることがあった。


とても優しいねねさまのことを、わたしはすっかり慕っていた。


志摩から籠を受け取ると、わたしは張り切って出かけたのだった。