【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

「迦陵」


そんなある日、菜っ葉を刻んでいると、家事全般を取り仕切っている志摩に声をかけられた。


未だ奥方のいないこの堀家では、彼女が奥の要となっている。


もうすぐ五十になるという彼女は、若い時からこの家に仕えているというから古参もいいところだ。


誰も彼女に頭が上がらない。


わたしも包丁を持つ手を止め、彼女を見た。


「なんですか?志摩さん」


志摩はいつもにこにこしている。


この柔らかい雰囲気の堀家そのものと言った感じの人だ。


出自の知れないわたしにもいつも良くしてくれる。


本当にいい人とは、彼女のような人のことを言うのだろう。


尼さまと言い、志摩と言い、秀政の懇意とする女性は皆人間ができている。