(ならば)
「ねえ、秀政。わたし怖いから、すっごく怖いから、一緒に寝てよ」
本当は何も怖くない。
でも彼が風邪をひいてしまったら、わたしは申し訳なくて、きっと明日は一日謝ってばかりになるだろう。
だから。
「怖い」と言えば、彼は嫌々でも腰を上げるはず。
案の定彼は盛大な溜息をついたかと思うと、重い足取りでこちらにやって来た。
けれどわたしが横たわる衾(ふすま)の傍にまた座り込んでしまったのだ。
「だめ、ここなの」
わたしは掛物をめくった。
「いや、さすがにそれはまずいだろ」
「なんで?何がまずいの?」
「だって、それは……」
「それは?」
秀政は困ったように首の後ろを掻くと、
「……お前、その、なんというか……男女のそういうことをまだ知らないとか、言うんじゃないだろうな……」
「なんだ?そういうことって。男と女で何かあるのか?」
途端彼が自嘲的に笑い始めた。
「な、なんだよ。どうしたんだよ?」
今夜の秀政はやっぱり変だ。
わたしも変だけれど、もっと変だ。
「そっか、そうだよな」

