【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

「濡れずに済んだな」


樽に水を移し替えた秀政がわたしの背後に立った。


彼の温もりを思わぬ近さに感じて、わたしは雨の様子を見るふりをしながら体を心持ち離した。


(わたし、なんか変だ)


彼のこと、妙に意識してないか?


自身の心の動きに付いていけず、わたしは戸惑っていた。




「迦陵。尼御前さまの所へ戻ろう」


「う、うん……」


彼の声を聞いただけでどきどきするなんて。


(本当にわたしはどうしてしまったのか……)


秀政本人にも、尼さまにも、聞くべきことではないような気がした。