【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

台所ではすでに飯炊きの婆さんがせせこましく働いていた。


小さい体で、何くれとなくよく動く婆さまだった。


そんな婆さまに何か言っても返事は返ってこないのは分かっているから、わたしは無言で土間に下り、まな板の上に青菜を乗せた。


そして手際よく、おひたしと麸の汁物を作ると、今度は水を備えていた方がいいということで、井戸へと向かった。


井戸へと続く勝手口を開けた途端、強い風にあおられた。


体がふわりと浮くような感覚を覚えたほどの強い風だった。

「急ごう」


少し怖くなって、足早に井戸端まで行った。


釣瓶を下ろしながら空を見上げると、先程よりも厚い雲がうごめきながら空を横切っている。


もうすぐ雨も降り始めるだろう。


重い桶を懸命に上に上げる。


釣瓶がぎしぎし鳴った。