「迦陵」


すると彼もわたしの名を呼んだ。


わたしの問い掛けるような眼差しに、彼は迷うように一度俯き、ややして意を決したように顔を上げた。


「迦陵」


「……」


「私と共に、尾張に行かぬか?」


「……オワリ?」


いきなりの話に、わたしは訳が分からなくなった。


何故、オワリ?


そもそもオワリとはどこなのか。


わたしは都しか知らない。


都の、掃きだめのような汚い場所とこの寺しか知らない。


「尾張は、天下を見られる所だ」


天下?


ますます険しくなるわたしの顔を見て、彼は苦笑した。


「ともかく来てみればいい。いろいろな物を見るのは、きっとお前の為になる」