「べ、別に他意あって見ているのではない。待っているだけだ」


男は弁解するようにぼそぼそと口の中で呟いている。


そう、彼にはきっと他意はない。


意識しているのは、わたしの方なんだ。


久方振りにあった彼を意識しているんだ。


だって、あんなにおとないを楽しみにしていたんだ。


彼と話をするのが楽しかったんだ。


わたしの二度目の生に希望を与えてくれた。


そんな彼を、この狭い空間の中で、もっと傍に感じたくて、意識して何が悪い。


彼は尼さまのほかに頼れる唯一人の人なのだ。