【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

わたしは反論の言葉を出せなかった。


男の言うことは至極もっともなことだったからだ。


ここで一日二回のおまんまを欠かさず貰えているのだ。


飢えることのない日々。


それをわたしは知ってしまった。


もう元になど戻れるはずはない。


男は黙ってしまったわたしの手を包み込むように取ると、

「今心を鬼にして厳しいことを言っているのも、すべてお前がこれから生きやすいようにと考えてのことなのだよ。だから我慢して、せめてどこかの武家に奉公が出来るくらいまではなってほしいんだ」

と噛んで含めるように言ったのだった。


男の手は温かかった。


女のように繊細な手だった。


そこから彼がわたしのことを本当に心配してくれているのだというのが伝わってきて、


わたしはこの世に生まれて初めて、人を信じる気になったのだった。