【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

続けて男は、

「いつも気になっているのだけど、お前ではなくあなた、だよ。お前なんて、女の子が使っちゃいけないよ」

と、さも親切そうに言ったのだ。


「でも仲間内では、みんなそう呼ぶよ」


「昔そなたがどのような者たちと付き合っていたかは知らないが、今はこの由緒正しきお寺に身を置くものだ。お前が相応の振る舞いを身に着けなくては、恥をかくのは尼御前さまだぞ」


いちいち説教くさい男だ。


「だったら、ここを出て行くよ。訳の分からない事ばかり吹き込まれて、わたしの馬鹿な頭ではついていけない!」


鬱憤が溜まっていたのか、わたしは男に対して声を荒げた。


けれど男は平然としている。


それどころかわたしを哀れむような視線を送りながら、


「ここを出て、また乞食の生活に戻るのか?戻れるのか?
また食うものに困る生活に、お前は戻ってもいいって言うんだな?」