【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

『おっしゃる』というのも、最近男に習った言葉だった。


頻繁に来ては、わたしの言葉遣いがなっていないことを嘆く男。


正直うっとうしいこともあるけれど、わたしのことを心底気に掛けてくれているのが伝わるだけに、つっぱねることもできずにいた。




「なんでお前はそんなにわたしに構うんだ?」

と訊いてみたことがある。


すると男は、

「尼御前さまに頼まれたからだよ」

と事も無げに答えたのだ。


男は尼さまのことを、アマゴゼと呼ぶ。


それも何故なのかよくわからないが、まあ呼び方は人の勝手だと思う。


それよりも尼さまに頼まれたからと言って、わざわざ乞食娘に教えを授けに来るだろうか?


変わってる、と思う。


尼さまに、すぐに追い出すように言うのならともかく、何を好き好んでわたしに会いに来るのだろう。


まったく変わった男だった。