【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

男はさる大名に小姓として仕えていて、尼さまに薫陶を受けているのだと言った。


でも、そう教えられても、わたしには何のことだかよく分からない。


そもそも人らしい言葉すら、まともには話せないのだから。


乞食であったわたしに、当然学などあろうはずもない。


道端に横たわっているわたしに、町人の子供たちが「アホウ」と罵りながら石を投げ付けていたのを思い出し、思わず粥の入った茶碗を取り落としそうになってしまったことがある。


この頃わたしは尼さまの手を借りることなく、自ら食事を取ることができるようになっていた。


一日二食、それも毎日、こんなにきちんと食べたことはなく、自分でも驚くくらい肥えてきていた。


それでも尼さまは、

「まだまだですよ。今までがまったく足りなかったのですから、もっと召し上がらないといけません」

などとおっしゃるのだ。