【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

「座らないのか?」


立ちすくむわたしを、信長さまは可笑しそうに見ている。


「秀政は……?」


ようやく搾り出した声はひどく掠れていた。


「秀政は来ないさ」


「そんな!」


問いただそうと後ろを振り返ると、すでに前田さんの姿はなかった。


やっぱり、信じちゃいけなかったんだ。


あの邪気のない笑顔に騙された。


わたしは体の横で両の拳を握り締めた。


「あまり酒は飲まないんだが、今日は久方ぶりに会えた祝いだ。酌をしてくれ」


そう言って信長さまは杯を持ち上げた。


わたしはため息をひとつつくと、しぶしぶ信長さまの前に座り、徳利を手に取った。


あまり怒ってんなさそうに見えるけど、でも油断は禁物だ。


信長さまはわたしなんかより一枚も二枚も上手なんだから。