【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

返事もせず顔をまじまじと見ているわたしに男は苦笑したが、腹を立てたわけではないらしい。


相変わらず、つぶらな瞳にはわたしをいたわるような光が瞬いていた。


「目覚めましたか?」


尼さまの声がした。


頭をそちらに向けようとしたが、まだ重たい頭は思うように動いてくれない。


「まだ気分が優れぬか?」


尼さまの慈悲深い声を聞くだけで、気分が良くなるような気がした。


「何も口にしていないのでしょう?」


「ここに来る以前も、思うように食べ物を得られない暮らしぶりだったようですから……」


「どうやら、そのようですね」


口振りからして、ふたりは親しい間柄であるようだった。


けれど今のわたしにはふたりの関係などどうでもよく、『食べ物』という言葉しか頭に浮かばなかった。