【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

「分かってます。でも……自分の生まれた場所を見てみたいのです」


「これから行っても今日中には戻って来れませぬ」


「山科には宿場がありますから、一泊くらいなら……」


わたしの意志が固いのを見て取ると、尼さまは仕方なさげに溜め息をついた。


「それほどまでに思うなら、そなたの良いようになさいませ。但し、明日の夕刻までは戻って来ること」


「はい、分かりました」


寺の前で、尼さまは小さくなるまでわたしを見送っていた。


その後わたしはあえて三条大橋へと向かった。


まだそこに仲間がいるのか確かめたくなったのだ。


ますます寂れていく京の町並み。


道の端で行き倒れている者の数が増えていく。


鳥辺野もあることから、この辺りは特にそういった者たちが目につくのだ。


わたしもこの中にいたかもしれない。


市女笠の奥で、わたしの頬を涙が伝った。