「すがさんは人目を払うような美女だった。だからというわけでもないだろうが、寺に来る浮浪者どもに目を付けられたようでな。わしも気を付けておったのだが、ある日の朝、忽然と姿を消してしもうた」
何があったかは明らかだった。
「まだ五つの幼子を抱えてどこへ行ったかと思っていたが……」
数年後炊き出しをするために河原へ赴くと、ごろごろと転がる死体の中に泣きじゃくる少女の姿があった。
それは紛れもなく、すがの連れていた幼子で。
その子の側に、老女のように変わり果てた姿で息絶えた、すががいた。
「わしは急いですがさんを寺に運び、荼毘に付した。あの人が烏なんぞについばまれるのは何とも耐えられんかったからの。じゃが女の子は……わしがいくら言っても寺には来ず、ずっと三条の河原で過ごしておった。そうしているうちに姿を見失うてな……」
住職は悔いるように眼を伏せた。
「それが、この者ですわ。住職さま」
尼さまは励ますようにそう言った。
「ふむ、すべては仏さまのお導き」
そう言って手を合わせる住職を見ながら、わたしは本当に自分の運命の不思議を思っていた。
では、わたしにいつも飯を作ってくれていた婆さまが、すがだったのだ。
そしてわたしの養母で……。
「そなたには、生みの親も育ての親もちゃんといたのです」
尼さまが優しく微笑みながら言った。
何があったかは明らかだった。
「まだ五つの幼子を抱えてどこへ行ったかと思っていたが……」
数年後炊き出しをするために河原へ赴くと、ごろごろと転がる死体の中に泣きじゃくる少女の姿があった。
それは紛れもなく、すがの連れていた幼子で。
その子の側に、老女のように変わり果てた姿で息絶えた、すががいた。
「わしは急いですがさんを寺に運び、荼毘に付した。あの人が烏なんぞについばまれるのは何とも耐えられんかったからの。じゃが女の子は……わしがいくら言っても寺には来ず、ずっと三条の河原で過ごしておった。そうしているうちに姿を見失うてな……」
住職は悔いるように眼を伏せた。
「それが、この者ですわ。住職さま」
尼さまは励ますようにそう言った。
「ふむ、すべては仏さまのお導き」
そう言って手を合わせる住職を見ながら、わたしは本当に自分の運命の不思議を思っていた。
では、わたしにいつも飯を作ってくれていた婆さまが、すがだったのだ。
そしてわたしの養母で……。
「そなたには、生みの親も育ての親もちゃんといたのです」
尼さまが優しく微笑みながら言った。

