【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

「ほうほう、これはこれは、なんとなく面影があるような」


「まあ、そうですか……」


「すがさんはいつも可愛らしい娘子を連れておった」




住職の話によるとーーー。




すがはもともと五条あたりの大店のおかみであったのだという。


それが応仁のいくさで焼け出され、一家は離散、旦那の行方も分からなくなった。


その少し前、山科の方の百姓の娘を赤子のなかったすが夫婦は養女として引き取っていた。


家も財産も店子も失ったすがは、その子だけを連れて都をさまよい、この寺に辿り着いたのだという。


「すがさんはおもゆをその子に飲ませておった」


住職は懐かしそうに目を細めた。


「それはそれは大事にしておったがの」


ある日紙と筆を貸してほしいと言われた住職はそれらを快く貸した。


何にするのかと尋ねると、すがは「すでに不惑を越えているからいつどうなるか分からない。だからそうなる前に、この子の氏素性が分かるものを残してやりたいのだ」と言ったのだという。


「それが、このお守り?」


「それはすがさんが持っておったものだ」


住職は本当にすがのことをよく覚えていたのだ。