【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

「そのお寺がこの近くなの。行ってみる?」


尼さまの穏やかな視線に促されるようにして頷いた。


「ならば参りましょう」






そのお寺は本当に近くにあった。


うっそうと茂る林の中にあるお寺で、静謐な空気に包まれている。


「このお寺の住職さまは皇室の信頼も厚い方なのよ」


身寄りのない人々の救済にも力を入れ、多くの無縁仏の供養を行っているのだという。


応仁のいくさで焼け出された人々も助け、そのような時に『すが』もこの寺を頼ったのではないだろうか。


事前に尼さまが訪ねる旨を伝えていたのだろうか。


わたしたちはすんなりと客間に通された。


居住まいを正して待っていると、初老の坊さまが入って来た。


凛として清浄な雰囲気を持つ住職だった。


「お久しゅうございます」


「尼御前さまにもお元気そうで何より」


「先日の文で詳細はお知らせしましたが、この者がその……」


尼さまがこちらを見たので、わたしはにわかに緊張して住職を見返した。