朝餉をすませると、尼さまに手土産のような物を持たされ、わたしたちは堀川五条を南に歩いていた。
尼さまの寺は北山にあるから、随分歩いてきたことになる。
いつも寺にいて出歩くことのない尼さまの思わぬ健脚に、わたしは自分の体力のなさをまた痛感するのだった。
そう言えば。
身寄りのないわたしに一時おまんまを食べさせてくれた婆さまが、わたしをこの辺りで拾ったのだと言うのを聞いたことがある。
「あ……」
「どうしました?」
先を行く尼さまが振り向いた。
「お守り……」
「え?」
「わたし、お守り持っていませんでしたか?」
「ええ……持っていたわ」
生きるか死ぬかの瀬戸際ですっかり失念していたけれど、その婆さまがわたしの着物にしっかり縫い付けてくれていたお守りがあったのだ。
『これは大切なものだから、けして手放しちゃいけないよ』
婆さまはことあるごとにそう言っていた。
でも今わたしの手元にはない。
尼さまの寺は北山にあるから、随分歩いてきたことになる。
いつも寺にいて出歩くことのない尼さまの思わぬ健脚に、わたしは自分の体力のなさをまた痛感するのだった。
そう言えば。
身寄りのないわたしに一時おまんまを食べさせてくれた婆さまが、わたしをこの辺りで拾ったのだと言うのを聞いたことがある。
「あ……」
「どうしました?」
先を行く尼さまが振り向いた。
「お守り……」
「え?」
「わたし、お守り持っていませんでしたか?」
「ええ……持っていたわ」
生きるか死ぬかの瀬戸際ですっかり失念していたけれど、その婆さまがわたしの着物にしっかり縫い付けてくれていたお守りがあったのだ。
『これは大切なものだから、けして手放しちゃいけないよ』
婆さまはことあるごとにそう言っていた。
でも今わたしの手元にはない。

