【戦国恋物語】出会いは突然風のように…

「え?」


わたしは驚いて素っ頓狂な声を上げてしまった。


わたしが信長さまの側室?


「先程言いかけてやめたのは、そんな噂だったんですか?」


「ええ……。家中の者たちはまことしやかに言い合っているわ。それで濃姫さまがたいそう不機嫌になっていらっしゃるとも」


濃姫とは、信長さまの正室だった。


わたしはまだ会ったことがない。


「そんな噂、嘘です。本人であるわたしが聞いたことないんですもん」


わたしは強い口調で否定した。


「そう、ならいいけど……」


心配そうに眉根を寄せるねねさまに、

「大丈夫です。いかに何でもありの殿でも、乞食娘を側室にしようなんて思う訳ないですよ」


と、かえってわたしが励ますように言った。


「でも殿のお考えは誰にもわからないわ。特に殿は身分など構わないところがおありだし。とにかくくれぐれも気をつけて頂戴ね」


体だけは大切に。


そう締めくくったねねさまの真意が、今のわたしには何となく分かってしまった。


いきなり襲われることもあると、ねねさまは言いたかったのだろう。


実際、信長さまはそのくらいのことしそうだった。