「そなたは……否応なく殿に連れて来られていながら、そのことを嫌がっていないように見える。違いますか?」


「違いません」


ねねさまは小さく息を吐いた。


「何故です?」


何故……。


それは。


「信長さまの側にいたい。そう思ったからです」


わたしは今の素直な気持ちを話す気になっていた。


それは相手がねねさまだったからだ。


ねねさまも口を挟むことなく、静かに耳を傾けてくれている。


わたしは秀政との出会いから話し始めた。


当然自分の生い立ちも包み隠さずに打ち明けた。


身寄りのない乞食であったことまで話さなければ、わたしの今の思いを理解してもらえない。


そう思ったからだった。


それを聞いてねねさまは一瞬驚いた顔をしたけれど、またすぐに穏やかな表情を取り戻した。


そして、一度京都で殿に会っていたこと。


その時心の中に吹いた風のこと。


その風は今も吹き続けていること。


だから殿の側にいたいこと。


などを淀みなく打ち明けた。