その時だった。カーテンがサァーと開く。

 今は看護師と言わなければならない若い看護婦さんが現れ、腰を曲げてガチャガチャと鍵を開ける。

 それにしても、気になることがあった。

 目に付いたのは、看護婦さんの金髪セミロングとピンクの衣服だ。あれでは夜のコスチュームではないか。

『なんか、エロくない?』

 勿論、誰も返事をしてはくれない。美和の心の呟きは、誰にも聞こえはしない。

 兎に角、今は朝だ。そんな衣装は夜にでもやってくれれば良い。


 腰を曲げると、紫色のブラジャーがガラス越しに見える。そもそも胸もとの緩い制服なんてあったのか?

 お爺さんが、それを覗いているような気がしてならない。──いや、ここにいるジジイ達はそれ目当てに違いない。

 実は体の具合いなんて、どこも悪くなかったりしないだろうか?

 疑いたくもなるのは、自分の体調不良のせいもあるだろう。

 それを差し引いても、やはり鼻の下を伸ばし過ぎてはいやしないか? 余計に頭が痛くなってきた。

 美和はその光景を冷ややかに見つめる。

『やれやれ……』

 そう思ったのは、既に二回目だった。


 ガチャリ。ようやく扉の鍵が開く。

 いつの間にか列になっていた人々が、扉に張り付いている。

 診療所の内側に扉が開く。

 その時、美和にとって、信じられないことが起こった。