俺は少し足早に賢杜のアパートへと帰り、バタンとドアの閉まる音を背に聞いたところで漸く人心地がついた。 部屋へと足音荒く踏み入れ、ソファーに倒れ込むように身を沈める。 いつもより少し早い、ドキドキとした心臓の鼓動が、俺を落ち着かなくさせた。 名前も知らないあの男は、賢杜と同じ銀行員だった…… スキャンダル、という言葉が、俺の脳内に浮かび上がる。 出世のため? 賢杜を蹴落とすため? わからない。 わからないけど。 「賢杜……」 ぎゅっと握り締めた、手のひらが痛い。