「君、いくら?」



ぶっきらぼうに後ろから声を掛けられた。



振り返ると、キチッと髪をなでつけた黒いサングラスの若い男。



スーツを着込んで、まるでベンチャー企業の社長みたいだ。



サングラスの向こうの表情は読み取れないが、俺は違和感を感じた。



(こいつ、ノーマルじゃねぇの?)



もしかしたら初めてなのかもしれないし、ただの興味本位なのかもしれない。



まぁどちらにしろ、俺には関係ないことだ。



しかし、もしかしたら刑事かもしれない。



俺は後から言い逃れが出来るように言葉は発さず、グイと三本指を突き出した。



男は頷くと、俺にこう言った。



「1ヶ月、雇いたい」