それでも今度は、佐久浪から話出した。 「付き合ってた彼女の、なんだ。 呼ばれたわけじゃない。 ただ陰から見るだけのつもりだった。 未練がましいよな……」 きっと誰かに吐き出したかったのだろう。 空になった器を前にして、佐久浪は俯いた。 「俺にはわかんないけど。 それだけ好きだったんだろ? 仕方ないんじゃね?」 そう言った俺に、佐久浪は「ありがとう」と呟いた。 礼を言われるとは思ってなかったから驚いた。 俺の頭の中は、『それを利用してお近づきになれないか』で一杯だったから。