名刺には佐久浪の名前の前に『遠塚銀行 本店営業部 主任』という肩書きがついていた。 俺が名刺から佐久浪の顔に視線を戻すと、ヤツは言った。 「財布を拾ってくれたお礼をしたいのだが」 その口調から、真面目というよりもマニュアル人間って感じだなと俺は思った。 俺みたいなヤツに名刺を渡すなんてどうかしてる。 怪しいヤツじゃないっていいたいのか? もっとも、怪しいヤツは俺の方なんだがな。 だが、どうやってお近付きになろうか思案していた相手からの申し出とは有難い。 俺は愛想良く頷いた。