(新side)
ここはとある焼肉店。

『これでよしっと…』

店頭にあるアンケート。
俺は用紙に記入してボックスに入れた。

『何やってんの、お前…』

大量のお皿を運びながら声をかけたのは…

『雅。 アンケート書いてんだよ。』
『そんな暇あったら働けって!』

それだけ言うとスタスタと歩いていく雅。

『だってアンケートに答えた人の中から10名に旅行券が当たるんだべ?』

しかし俺の言葉でバックしてきた。

『マジで?』
『マジマジ。 俺、毎日書いてるし…』

雅は少し考えた後、お皿を床に置いてペンを取った。

アンケート用紙には温泉旅行ペア宿泊券と書いてある。

『ペア?!』

って事は…
(雛姫と行く気か?)(ヒナ嬢誘いそうだな。)

お互いを見合って同じような事を思った。


そしてアンケートを書いた事も忘れかけたある朝…

雅の家に1通の手紙が届く。

『あ、当選してる!!』

見事にペア宿泊券が当選。
封筒を握りしめ、猛ダッシュで学校へ向かった。



同時刻。

『ヒナ嬢って温泉好き〜?』

俺は当たり前のように2年生の教室にいる。

『嫌いではないけど… 何で?』
『じゃーん♪ ペア宿泊券!』

ヒナ嬢に届いたばかりの宿泊券を得意げに見せる。

『くれるの?!』
『ヒナ嬢が暇なら俺と『真由と温泉行こ〜♪』

ヒナ嬢は最後まで話を聞かずに嬉しそうに教室を出ていった。

宿泊券を持って…

ヒナ嬢…
話は最後まで聞こうよ…

ガックリと肩を落とした時、誰かが後ろから肩を叩いた。

『…紗奈!』
『おはよ♪ 雅知らない? 渡したいものあるんだけど…』

そういやまだ雅のやつ来てないなぁ…

『いつも通り遅刻じゃね? 何を渡すの?』
『それがね! 温泉旅行の宿泊券当たったんだ♪』

紗奈が嬉しそうに出したもの…
それはまさに今、ヒナ嬢に奪われたものと同じものだった。

『紗奈、俺と行こ!』
『馬鹿言わないでよ! 何で新と…』

紗奈がそう言ったその時…

『もらったぁ!!』

俺は宿泊券を引ったくって逃走した。

絶対に雅だけは行かせねぇ!!