そこにいたのは、 窓から夕焼けを見つめるケンタだった。 振り返ったケンタは、ちょっと驚いて、 「…帰ったんじゃなかったのかよ?」 と呟いた。 「忘れ物しちゃったの! ケンタこそなんで、帰らないの?」 と、問い返す私に、 ケンタは、 「ちょっと、考えごと」 と言って、笑った。 …だからその笑顔は、私にとって反則なんだってば。 私はうるさく鳴る心臓の音が聞こえないように、 パタパタとわざとらしく自分の机に駆け寄った。