俺は家の前まで来て、ため息をついた。 「…入りたくねぇ…」 なんで、兄貴にバレたんだろう…。加奈の奴、何をヘマしたんだよ? さっきの兄貴からの電話に出て聞こえて来たのは、『お前、今すぐ家に戻って来い』っていう、兄貴の低い声だった。 聞かなくても大体想像がつく。加奈と俺の嘘の付き合いが、兄貴にバレたに違いない。 俺は覚悟を決めて、家に入る。 「……兄貴?」 居間にいる兄貴に、声をかけた。 「…ケンタ、まず着がえて来い」 …相当怒ってるようだ。