「なぁ、なんで…」

ケンタは手に少し力を込めて言った。

「なんで、逃げんだよ…」

逃げる…?


「…なんで、気づかねぇの?葵…俺は…」

「ケンタ…?」



「俺は…お前が……」






♪♪♪~


着信音が響いた。

ケンタは、はっとして掴んでた手を離す。


携帯を取り出して、相手を確かめると、

留守電に切り替えて、ポケットにしまった。


さっきまで掴まれてた、腕が痛い。

私は泣きそうな気持ちでケンタを見た。


今、何を言おうとしたの…?

期待させないで…

ありえない想像が頭を掠めて、ますます泣きそうになった。