話し声が漏れていたのかも知れない。 誰かの足音が聞こえて、ケンタは立ち上がる。 「まずいな…葵、こっち」 私の腕を掴んで、急いで立たせてくれた。 「えっ…ちょっと!」 「馬鹿、黙れって」 教室の後ろに山積みになった机と椅子の、死角になる部分に隠れる。 「おい、誰かいるのか?」 教頭先生の声。 見つかったらまずい! すぐ隣にはケンタがいて、私の心臓の鳴る音が聞こえてしまうんじゃないかと思った。 多分顔は真っ赤で、うまく息が出来ない。 お願いだから、早く行って…!!