『お姉ちゃん。辛いことや悲しいことがあっても、終わらない冬はないよ。春は必ず来るから、元気だしてね』

楓はそう言って、ユキネの前から立ち去った。

『春は必ず来るか…。スノードロップ…花言葉は希望…』

ユキネはそう呟きそっと目を閉じ、またハナの事を思い返した。

『ハナ…埼京の時も、ママが倒れた時も、あたしの辛い時はいつも傍にいてくれたな。お前は辛い事たくさんあったくせに、あたしの前じゃいつも笑顔でさ…。希望を教えてくれてたのもハナだったし…あたしはお前から貰ってばかりだったな…』

ユキネはしばらく考え込んだ。

そしてユキネはスノードロップを握りしめた。

『決めた。ハナ…あたしがお前にしてやれること…それはお前の夢を代わりに叶えてやる事。それくらいしか出来ないけど、空の上まであたしの歌を、ハナの夢を届けてやるよ』

星空を見つめ、そう決めたユキネはシュンに電話をかけた。

『あー、オッサン。さっきは悪かったな…あたし決めた。イギリスに行くよ』

ユキネはただそれだけ言って電話を切った。

そしてユキネは、ハナの事故現場の踏切にやってきて、握りしめていたスノードロップをそっと供えた。

ユキネがもう一度歩き出す決心をした…そんな姿を見守るかのように夜空の下のスノードロップは、淡い光を放つかのように輝いていたのだった。