『お金は何年かけてでも、絶対に返す。でも歌は歌わない…』

ユキネはそう言って、店を出て雨の中走り去った。

『はあー、やれやれ…強情な奴だなぁー』

シュンはユキネの母親をお姫様抱っこし持ち上げ、近くの椅子に座らした。

『お金払ったし、もう奴らも来ませんし安心して下さい』

シュンは店内の椅子やテーブルを元に戻した。

『ホントにすみません。見ず知らずの方に肩代わりしてもらって…何年かかってでも返しますんで』

ユキネの母親はシュンに頭を下げた。

『いえいえ。じゃあ、俺帰ります。身体気をつけて下さい』

シュンはそう言って、店を出た。

『しかし、何でユキネはあんなに歌う事を拒むんだろう。日本にいられるのも明日で終わりか…明日もう一度ユキネに会ってみるか』

シュンは雨の中傘をさしホテルへと戻り、明日の最終公演に備え、いつもより早めに眠りについた。