『こんなに涙流して…よっぽど返して欲しいんだね』

キョウコはハナに近づき優しく言った。

『お願い…』

ハナは泣きながら呟いた。

『じゃあ、返してあげるよ』

キョウコはそう言うと、ポケットからハサミを取り出した。

『…えっ?』

ハナは嫌な予感がした。

『よーく、見とけハナー。ほらほらほらほらー』

そう言ってキョウコは、ハサミでハナの大切な小犬のストラップを満遍なく切り刻んだ。

それを見たハナは頭の中が真っ白になり、力無く崩れ落ちた。

『ほら返してやるよ』

キョウコはそう言って、切り刻んでワタが飛び出している小犬のストラップを、ハナの目の前に捨てた。

ハナはもう言葉すらだせず、涙すら流れなかった。

ハナは放心状態のまま目の前の小犬のストラップを見つめた。

そして切り刻まれた小犬のストラップを持ち、静かに立ち上がりフラ〜っと教室を出て行った。

そんなハナを見たキョウコたちは大笑いしていた。