そしてレコーディングは納得の行くまで、何度もやり直させられた。

『ユキネ、ちょっと休憩しよう』

シュンのその言葉を聞いたユキネは、ブースから出て外の空気を吸いにスタジオを出ていった。

『シュン、お前の言ってた通りだな。ユキネの歌声は良いな』

小林誠吾はシュンに笑顔で言った。

『そうでしょ』

シュンはニコッと笑った。

しかしシュンは、何かいつものユキネらしさがない今日のユキネの歌声に引っ掛かっていた。

『俺も外の空気を吸ってきます』

シュンはそう言ってスタジオを出た。

するとユキネがスタジオの前の、石垣で出来た植木に腰をおろして、空を見上げていた。

『ユキネ…』

シュンはそんなユキネに声をかけた。

しかしユキネはただ黙って空を見上げていた。

シュンはユキネの隣に座った。

『なあ、ユキネ…どうしたんだ?』

シュンはユキネの横顔を見つめた。