『ふっ…里菜は何でもお見通しなんだな…』

シュンがそう言うと里菜はニコッと笑った。

『レインボーミュージックからユキネのデビュー話をいただいた…』

『えー、良かったじゃん』

里菜は喜んだ。

『けど、俺が曲を書けなくてさ…ユキネのデビュー曲は楽曲提供を受けた曲になるんだ』

シュンは元気なく言った。

『そっか…』

里菜はうつむいているシュンを見つめた。

『俺…スゲー悔しいんだ。ユキネのプロデューサーなのに、デビュー曲を書いてやれない…曲が書けない自分が悔しくて悔しくて…』

シュンは曲を書けない自分を悔やみ、涙を流した。

そんなシュンを見た里菜は、カウンターにお酒の瓶を置いた。

『シュン…今夜はあなたに付き合ってあげるよ』

そう言って里菜は自分とシュンの分のグラスを用意し、お酒を注いだ。

『サンキューな、里菜』

シュンは涙をゴシゴシ拭き、里菜に笑いかけた。

里菜はシュンのやけ酒に一晩中付き合ったのだった。