『この前はユキネを助けてくれてありがとうございました』

ハナは病院の廊下でシュンに頭を下げた。

『イヤ、お礼を言われるような事は俺は何もしてないよ。この前も一緒に殴られただけだったしな…』

そう言ってシュンはハナに歩み寄った。

『ユキネは今辛い状態だろうから…ハナちゃん、ユキネの傍に着いていてやってくれ』

シュンはハナの肩をそっと叩き、病院を出て行った。

『ママ…さっき埼京 優一に会ったよ。まだ少しはママの事愛してるかな?って甘い期待を抱いてけど…そんな事なかった。ママ…早く目を覚まして…』

母親の手を握りしめるユキネの涙が、母親の手の上に零れ落ちた。

『ユキネ…』

病室に戻って来たハナは、涙を零し、静かに眠っている母親に語りかけるユキネを見ているだけで、ただ何もしてあげることができず、そっと後ろの方で唇を噛み締めて涙を流していたのだった。