埼京に名前を呼ばれたユキネは立ち止まった。

『ユキネ…お前が俺の娘のユキネだったとはな…』

埼京は、背を向けるユキネをじっと見つめた。

ユキネは埼京の方を振り返った。

『埼京…何でお前がここにいるんだ?』

ユキネは埼京を睨みながら尋ねた。

『ふっ…俺も歳だからな、病院に通うこともあるさ』

『ママのために駆け付けたんじゃないのか?』

ユキネは不機嫌に尋ねた。

『どういうことだ?』

埼京はユキネの母が倒れた事を知らない様子だった。

『ママが倒れた…この病院に運ばれたんだ』

ユキネは説明した。

『アイツが…そうか。だが、今の俺にはアイツの事など関係ない』

埼京は冷たく言い放った。

『関係ないって…お前が出て行った後、ママがどんなに泣いていたかなんてお前は知るはずもないもんな!!』

ユキネはこぶしをギュッと握りしめた。