魔女の瞳Ⅵ

その答えが無詠唱。

つまり詠唱を行わずに魔術を発動させるのだ。

術式を極限まで簡略化して、詠唱の時間をも短縮する。

結果、頭の中にイメージするだけで魔術が行使できる。

本来ならば呪眼無しでは不可能な技法。

いや、呪眼があったとしても、高度な魔術にはやはり呪文の詠唱が必要となる。

なのにお母様は。

「っっっっ!」

私がかつてホムンクルスを仕留めた『消滅』の魔術さえ、無詠唱で行使して見せた。

何物をも消し飛ばす、滅亡の閃光。

その光が私の腕をかすめる!

「うっ…くぁぁあぁぁっ!」

左腕の肉が削ぎ取られ、その痛みに私は絶叫した。

「…気分のいいものではないわね…実の娘を嬲るというのは…」

お母様はゆっくりと歩み寄ってくる。

「……っ」

私は歯噛みした。

圧倒的だ。

これが先代当主、サリィ・デッドゲイトの力…!