「蓮…」


 反射的に蓮のジャージの裾を掴んだ。

不安げな顔で蓮を見上げる。

「ったく、こんなときに」


 ボソッと蓮がそう言ったのが

聞こえた。この言葉からして、

あの目つきの悪い連中と蓮は

何かしらの関わりがあるとみた。

「無理だ。それは断ったはずだ」


 玲華は驚いた。今までに聞いた

事のない蓮のドスのかかった声。

「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ」


 前に出てきたリーダーらしき人が、

蓮のむなぐらを掴み、170cm後半ある

蓮を軽々ともちあげてしまった。

「やんのかワレ!」


 蓮も負けずと、声を張る。

「上等じゃあ。お前ら、捕まえな!」


 元々、人気のない道だった。

玲華は今までに遭遇したことのない

状況に怯えるばかりだった。

「玲華、逃げろ!」

 殴り合いの最中、痛々しい音が

響くなか、蓮が叫んだ。