「真夏の部室と水しぶき」
夏休みの宿題をかばんに押し込み
向かう先はいつもの更衣室
夏服の白いシャツからはみ出した先輩の赤いタンクトップ
扇風機しかない部屋で
暑い暑いと
言いながら
下敷きで顔をあおぐ先輩
先輩の匂い
下敷きの風に乗って
私の鼻をくすぐる
そして
胸の奥の大事な場所を
トントンとノックする
蒸し暑い更衣室の窓を開けて
外をのぞくと
大好きなプールから水しぶきが飛んでくる
宿題を見せろと言った先輩
水泳だけじゃなく数学も得意で
スラスラと答えを書いた先輩は
内緒だよって笑った
この夏
この瞬間
忘れはしない
ときめく胸を両手で押さえ
ひとつのペットボトルのジュースを飲む
狭い部屋
セミの声
水の音
大好きなプールの匂い
大好きな先輩の匂い